経営目線から考える、SESのデメリット

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今回はエンジニア目線ではなく、経営目線でのSESのデメリットついてお話をします。

これを知ると、経営的思考もできるようになるはずです。

社長はいつも大変なのです。

他社との差別化が困難

他社との差別化が困難|経営目線から考える、SESのデメリット

SES会社の差別化で大切なのは、営業力だと考えています。

なぜなら、案件が他社依存だからです。

自社サービスや受託開発をしていないので、技術も現場任せになります。

また、大きなプロジェクトであれば、多数の会社と組んでチームを作ります。

そうなると、参画している会社の差別化がほとんどなくなってしまいます。

会社は違いますが、仕事内容は同じになるからです。

もちろん、SESはピラミッド構造なので、上の階層に行くほど差別化はできます。

しかし、同じ階層で仕事をしている会社間での差別化がほとんどありません。

SES会社で差別化を生み出すには、たくさんの現場数を用意することが大切になります。

現場数が少なければ、現場が選べません。

社員が、JavaをしたくてもC#案件しかない場合はできません。

現場数が多ければ、社員からヒアリングし、なるべく希望の技術・案件にアサインをすることが可能でしょう。

また、現場での立場が他の会社と同じの場合、残る差別は給料しかありません。

オフィスにお金をかけず、しっかりと社員に還元している会社は、満足度も大きくなります。

帰属意識の喪失

帰属意識の喪失|経営目線から考える、SESのデメリット

SESのほとんどは、客先常駐です。

始業から終業まで、お客様先で作業をします。

例えば、社員数が100名規模としても、現場に3名で参画していれば、毎日会うのは3名だけになります。

1人であれば、ひとりぼっちです。

最初は寂しさを感じ、だんだん時間が経つにつれて

「私ってどの会社なんだろう」

となる人が多数出てきます。

人は寂しがりやが多く、そうなってくるとほとんどの社員が退職してしまいます。

隣の芝生は青く見えるというように、現場にそのまま転職する人もいます。

自社の仲間とお客様ではやはり緊張感が違います。

また、その場合は上の階層に行くことがほとんどなので、お給料も増えます。

バラバラの仲間が、唯一自社の人間と顔を会わせるのは、月1回の定例会などでしょう。

しかし、残業などで参加できず、1年間顔を会わせない社員も少なくありません。

会社HPの自社紹介で、自社の魅力が飲み会やレクリエーションしかない会社もあります。

飲み会では、現場がみんな違うので、ビジネスの話がなかなかできません。

愚痴自慢になることも多いです。

ビジネスをしたい人は、転職準備をしていきます。

私的には、帰属意識の向上は社員同士のコミュニケーションは必須と考えています。

しかし、経営者から見ると、SESでのコミュニケーション向上は悩みの種です。

現場では、ネットや携帯禁止のところもあるため、必然的にコミュニケーションが遮断されます。

仕事後にコミュニケーションをとるのは非効率です。

現場でも自由にコミュニケーションを取れるところもあるので、そういう現場を探す必要があります。

中堅層を採用しにくい

中堅層を採用しにくい|経営目線から考える、SESのデメリット

SESは比較的未経験でも採用しやすいです。

そのため、経験者よりも未経験の応募が多く、ベテランを採用したくてもなかなか採用ができません。

上昇志向のある人は、SES → 受託・自社サービス・独立のキャリアがほとんどで、SES会社に転職することは少ないです。

実際、中小企業が転職サイトで募集しても、未経験の応募が圧倒的に多いです。

未経験をNGにすると、応募が激減します。

大企業は給料が高いため、中小SESから転職する人は多いです。

中小から中小へ転職する人は少ないのが現場です。

よって企業は、リーダークラスの採用・育成に非常に苦労しています。

SESでは、ある程度成長すると転職してしまうためです。

育成をした社員が退職すると、教育コストの回収もできず、リーダー候補がいなくなるのでまた未経験から育てないといけません。

ノウハウがストックされない

ノウハウがストックされない|経営目線から考える、SESのデメリット

SESのほとんどは客先常駐になります。

自社サービスや受託と違いノウハウがたまりません

プログラムやデザインは、使える部品をストックしておき、違う案件で再利用します。

そうすることで、コスト削減になり利益が上がります。

しかし、現場に出てしまうと、ノウハウは現場にたまります。

自社にはたまりません。

案件が終わっても、次の案件に参画するため、ノウハウがエンジニアに依存してしまいます。

退職されてしまうと、ノウハウがなくなります。

自社サービスや受託であれば、退職をしてもノウハウはストックされます。

また、技術も厳選しているため、どのエンジニアも同じことができるようになります。

客先常駐の場合、案件でバラバラになるため、共有もしにくいです。

一極集中すると、多数のエンジニアに同じノウハウがたまりますが、一括契約終了のリスクがあります。

現場が一極集中のリスク

現場が一極集中のリスク|経営目線から考える、SESのデメリット

先ほど、帰属意識とノウハウの話をしました。

「だったら、エンジニアを1つの現場にしたら、帰属意識やストックが生まれるんじゃない?」

という案があります。

しかし、現場が1つというのは非常にリスクがあります。

例えば、50人規模の会社でほどんどのエンジニアが1つの現場に行った場合、確かに帰属意識は生まれるかもしれません。

一般的に、SES契約は、3ヶ月〜6ヶ月毎に契約の延長をします。

もし、そのタイミングで、プロジェクトが終わり、予算がもうない場合、そのエンジニア全員が終了となります。

その瞬間に、50人分の次の現場を探さなければなりません。

営業先が1つに依存していた場合、

50万円 * 50人 = 2500万円
※単価は例

のキャッシュが毎月なくなっていきます。

中小企業ならばもちません。

数ヶ月で倒産するでしょう。

帰属意識を高めるために、たくさんの社員を同じ現場にすることはリスクがあります。

なので、営業やコネをたくさん用意し、バランスよくエンジニアを配置することが重要です。

そうすると、帰属意識を維持しつつ、案件が終了してもキャッシュが枯渇しません。

一極集中せず、バランスが大切です。

社長や営業は、SES会社との定期的な情報交換と案件確保が重要になります。

昇給が頭打ち

昇給が頭打ち|経営目線から考える、SESのデメリット

一般的な会社であれば、年齢が上がるにつれて年収が増えていきます。

しかし、SESは現場毎に予算というものが決まっています。

最大予算が60万円の現場であれば、60万円が限界です。

1年間で計算すると

60万円 * 12ヶ月 = 720万円

最大で720万円しか売上がないので、年収はそれ以下になります。

700万といえば、公務員や大企業の課長前後でしょう。

中小企業であれば、500〜600万円です。

SESだけをしている場合、年収の頭打ちがきます。

そのため、ビジネスパートナー(BP)を営業で増やす会社が多いです。

SES会社の営業は、現場を探すのも大切ですが、BPの獲得も必要です。

BPには案件を紹介し、そのマージンで利益を出します。

SESの利益は反比例せず、比例するので数が必要です。

自社エンジニアの採用とBP営業をしなければ、利益幅が増えません。

最後に

以上が、経営目線でのSESのデメリットでした。

SESはローリスク・ローリターンのビジネスになります。

自社サービスや受託開発のハイリスク・ハイリターンといった派手さはないですが、安定したキャッシュフローが期待できます。

しかし、サービスの大ヒットということがないため、成長が長期になります。

さらに差別化がないと、成長した社員も退職していきます。

SES会社の経営者は、日々頭を悩ませています。

そういった問題もあると認識し、SES会社の大変さを理解しながら勤めている社員は少ないです。

たまには、社長や上司に寄り添うことも大切です。


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